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本日は晴天なり[お題]


※※※

 些細なことで口喧嘩になり、宿を一人で飛び出したきりなのだーー訪ねてくると聞いていたのに待てど暮らせど音沙汰がなく、兄弟の定宿へ連絡してみれば、電話口に出た弟からそんなことの次第を告げられた。
「兄さん、あれでも律儀なとこあるので、約束していたのならそちらに向かうと思ったんですが……」
 ご連絡もせずにすみません、と殊勝に謝罪されれば、気に病むことはないと返すしかない。お詫びにと、こんな時に兄が行っていそうな場所をいくつか提示される。暗に探しに行って欲しいということらしい。意地っ張りなのだか心配性なのだかわからないその対応は、案外兄と似ているかもしれない。
 ロイは苦笑を浮かべて受話器を置くと、副官に断って遅めの昼休憩がてら外へ向かう。聞かされた心当たりの場所のうち、一番司令部から近い公園へと向かった。念のため、他の場所も巡回のついでに立ち寄るよう、部下に指示も出してある。
 果たして、春先の少し肌寒い公園のベンチに、探していた兄である少年は一人座っていた。器用に背もたれに首を乗せて仰向いた姿勢で、ロイが近づいてもぴくりとも動かない。もしや、うたた寝でもしているのかと思ったが、間近まで行くと瞼はしっかり開いていて、蜜色の飴玉のような瞳がじっと天空を見ているのがわかった。
 ロイも釣られたように空をふり仰ぐと、そこには久しぶりに見る晴天が広がっていた。ここのところ冬がぶり返したように気温が低く、天候もすっきりしない日が続いていた。いわゆる花冷えというやつだ。澄んだ青がロイには少し眩しくて、目を細めて手をかざした。
「リゼンブールの空は……」
 唐突に少年が口を開く。
「うん?」
 独り言かもしれない呟きを邪魔せぬよう、しかし聞き逃さないよう、さりげなく相槌を打って続きを促す。
「もっと青くて、もっとずっと広くて大きいんだ」
 自分の帰る場所はあそこ以外にはないのだと、言っているように思えた。
 ロイは一度だけ訪ねた、少年の生家のあった場所を思い浮かべる。長閑な田舎の牧草地が連なる先、丘の頂を見上げれば木々と小さな家、そしどこまでも続く空だけが目に映ったのを記憶している。
「ここの空も君の故郷の空も、繋がっている同じ空だよ、鋼の」
 ここも帰る場所の一つにすればいい。自分のいる、この場所を。そんな想いを込めて、少年の耳元に囁いた。少し拗ねた気持ちにさせられたので、低く深く彼の脳に浸透するような声で言ってやった。案の定、びっくりしたように金色が跳ね起きた。思わぬ近さから声が聞こえたことに驚いたらしい。
「ひゃっ?! た、大佐?」
 やっと意識がこちらに向いたことに満足して、ロイはエドワードの腕を取るとベンチから引っ張り起こした。
「アルフォンスが心配していたぞ? もちろん、我々もだ。さあ、司令部へ戻ろう」
「や、今日はやめとくわ……」
 そのまま腕を引いて歩こうとしたが、エドワードは尻込みするようにその場に踏ん張る。
「私に職権乱用紛いの許可証を用意させといて、いい度胸だな。あれはなかなか骨が折れたぞ」
「わりぃ、明日出直させて?」
 こんな時だけ子供らしく首を傾げてお願いしたって駄目だぞ、鋼の。可愛いけれど。
「君は中尉が君のために特別に用意したお茶を飲まずに去っておいて、明日まともに顔を合わせる度胸があるのかね? 今頃、給湯室ではいい香りが漂っているだろう」
「……うかがいます」
 自分に中にふっと湧いた感情に疑問符を打ちつつ、駄目押しの一手を投げかけると、エドワードも観念したように脚を進め始めた。
「大空が見たいのだったら、ここらにもいいところがあるぞ。今度また天気の良い日に連れて行ってあげよう」
「いらねー。場所だけ教えてくれ。アルと行くから」
「残念ながら、軍の許可がないと立ち入れない場所だ」
「えー、そんなとこがリゼンブールに敵うわけねえぜ。てか、それこそ職権乱用ってやつじゃねえの?」
「他ならぬ君の気を晴らすためだ。後見人として当然の務めだよ」
「げっ、なんか胡散くせえ。またサボりの口実だろー」
「失敬な。サボりならこんなちんちくりんでなく、妙齢の女性を誘っていくとも」
「な! だあれが目を凝らさないと見えないようなスーパーウルトラミジンコドちびかっ!! てか、サボりって言ったな? 中尉にチクってやる!」
「そんなことをしたら、中尉のお茶を無視して帰ろうとしたことをバラすぞ」
「おとなげねえ!」
「うむ。大人にだからこそ使える言葉だな、ははは」
「きーっ! ああ言えば、こう言う!」
「ほら、早く行くぞ。中尉のお茶が冷める前に戻らねば、二人とも銃の的だ」
「聞いてねええええ!」
 久々に晴れ間を見せた空の元、大人と子供のどちらがどちらだかわからない、はたから見れば漫才のようなやり取りとドタバタと駆け去る足音が響いていた。幸いにもその場には他の誰も居合わせなかったので、その一部始終は二人だけの秘密になったのだった。

ー原作設定・共に無自覚?ー

5・真っ青な大空
(仰ぎ見るたび違う空「晴れで5題」より)

※※※

晴れのお題、ようやくコンプ!
このお題やり始めてから思ったのですが、天気のお題ってその日の天気で書けるお題目が変わってくるというか。
晴れの日に雨のお題を書けないわけじゃないけど、ネタを思い浮かべにくいというか。
ここのところ空模様がすっきりしなかったので、そちら系のお題を考えたりしていたのですが、今日書くとやっぱり晴れのお題になりました(笑)

今回は多分デキてない二人。どちらも自覚もしていない感じですねえ。
でも基本設定は、これからロイエドになるかロイエド前提なので、そんな目線で読んでやっていただければです。
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